大映特撮ナイト 第10夜 「怪談佐賀屋敷」

DeAGOSTINIの大映特撮映画DVDコレクションを中心に大映特撮映画を公開年代順に観る一人上映会、第10回は1953年公開の「怪談佐賀屋敷」。実は僕にとって化け猫映画初体験。いや、こんなに面白いものとは思わなかった。

鍋島家家臣諫早豊前の陰謀で殺された龍造寺家当主又一郎と自害して果てたその母親の恨みを晴らすため、飼い猫こまがスーパーパワーを使って復讐していく話。それを追う探偵役の小森半左衛門を「西遊記」他で孫悟空を演じた坂東好太郎が演じている。

化け猫の側には復讐するだけの理由があるわけなので復讐譚としても楽しめ、同時に化け猫というモンスターを退治するドラキュラ映画的側面もあって、その辺のバランスがいい。復讐される側をいかにも悪い豊前(杉山昌三九)と豊前に唆された根はいい人の鍋島丹後守(沢村国太郎)に分けることで、復讐する側、される側両方のカタルシスを用意している。ヴァン・ヘルシング的キャラクターである半左衛門も丹後守に仕えながら同時に龍造寺家に親しい人物に設定していて抜かりがない。半左衛門がわりと近代的な合理主義者であるのもいい。丹後守が怪異に怯え精神を病んでいく描写もよく描けていて、見ようによっては罪の意識に駆られた丹後守が幻覚を見ているとも取れる。

しかし何といってもこの映画の魅力は化け猫というモンスターそのものの魅力だ。化け猫は人に取り憑いてその人になりすますのだけど、身近な人物が実は化け猫である、という設定がけっこうSFホラー的。化け猫には人を操る能力もあって、操られた人間がアクロバティックな動きをするのは「エクソシスト」の悪魔に取り憑かれた少女リーガンのようだ。こっちの方がずっと早いわけだが。見世物映画としても十分面白い。化け猫女優入江たか子、というのは名前だけは知っていたけど確かにインパクトあった。髪を振り乱し口の周りを血だらけにして大立ち回りを演じる入江たか子はモンスター役者として十分に存在感がある。猫の動きを取り入れつつ、首に噛み付く描写なんかはむしろ吸血鬼的。しかもハマーの「吸血鬼ドラキュラ」より何年も前の映画なのだ。(雰囲気は戦前のおっとりした「魔人ドラキュラ」よりはハマー映画にずっと近い。)アクロバティックなシーンを演じるスタントの人が女性に見えないのはちょっといただけないが。

入江たか子主演の化け猫映画はこの後何本か続く。次回はその一本である「怪猫有馬御殿」。
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大映特撮ナイト 第9夜 「大あばれ孫悟空」

大映特撮映画を公開年代順に観る一人上映会、第9回目は番外編1952年9月の「大あばれ孫悟空」。番外編なのはこれがDeAGOSTINIの大映特撮映画DVDコレクションに入っていないから。1952年4月公開の「西遊記」の続編でわずか5ヶ月後に封切られている。人気あったんだろうなあ。

孫悟空に坂東好太郎、三蔵に春本富士夫は変わらないが、猪八戒が花菱アチャコから羅門光三郎に、沙悟浄が杉狂児から伴淳三郎に変わっている。八戒が関西弁なのは変わらず。沙悟浄のキャラはだいぶ変わっている。舌をペロペロ出す演技が特徴。前作で金角大王を演じた徳川夢声がナレーション。ちなみに猪八戒役の羅門光三郎は戦前の映画で孫悟空を4回演じているそう。

金魚の化身霊感大王、女郎蜘蛛の化身青面公主、虎力大仙、鹿力大仙、羊力大仙、猿の化身狙力大仙と動物の化物が次々三蔵一行の行く手を阻む。

前回より喜劇色が濃くなっている印象。セットなどは前回よりも豪華で映像もずいぶん洗練されている。ただ個々のエピソードがやや小粒なのは否めない。危機になると観音様が助けてくれるというのもちょっと肩透かし感はある。役者陣では三蔵に横恋慕する青面公主の清川虹子がおかしい。ウィキペディアを見ると、この年清川虹子は沙悟浄役の伴淳三郎と結婚している。7年後には離婚してるけど。

音楽が色々工夫されているのもこの作品の特徴の一つだが、砂漠を一行が歩いているシーンなどで電子オルガンらしき音楽が使われている。1952年という時代を考えるとだいぶ早いのではないだろうか。


次回は「怪談佐賀屋敷」。

ロマンポルノ・リブート(その3)

個人的にリブートの方で一番面白かったのは塩田監督の「風に濡れた女」。神代監督の「恋人たちは濡れた」のラストをちょっと思わせるオープニングで始まるのだけど(僕はこれも続けて観たので面白かった)、塩田監督のは全然濡れた感じがしない。カラッとしたコメディタッチの作品。主人公の男の目の前でいきなり自転車で海に飛び込む女。その女が男に何の理由づけもなく絡んでくる。基本的に今回のリプート作品は女の側が積極的な作品が多くて、それは今の時代を考えれば当然なんだろうけど、「風に濡れた女」のヒロインは中でも突拍子もなく面白い。テンポもよくラストのハッピーな感じもいい。

行定監督の「ジムノペディに乱れる」は今回のリブート作品の中では唯一はっきり男性を主人公にした作品。板尾創路さん演じる映画監督がいろんな女性と関係を持つ一週間を描く。男性を主人公にポルノ映画を作るのって今の時代かえって難しい気がする。この映画も主人公のダメっぷりが面白くもあるがちょっとイラッとさせられる。ちょっとナルシシズムが入っちゃっている感じがこの軽い不快感の元なのだろう。ラストはけっこうメロドラマ。ヒロインの一人を演じた芦那すみれさんはよかった。

一番ポルノから遠いのは当然のことながら園子温監督の「アンチポルノ」。タイトルでそう言っちゃってるからね。去年立て続けに公開された園監督の映画をことごとく観逃していて、ちょっと久しぶりの園作品になったのだけど、これがなかなか強烈だった。最初から最後まで登場人物が叫んでいて、ほとんどのシーンで舞台になっている部屋は原色で、ストーリーは何重にも入れ子構造になっていて、どれが現実でどれが幻想なのかの区別もつかない。観て疲れたが面白かった。破壊力はある。でも園監督はもうポルノ撮らなくていいと思う。

45周年ってちょっと中途半端な気がしたが、「映画芸術」の中田監督の言によると、日活的には50週年に向けて長期的な展望があるよう。リブートもこれで終わりではないらしい。今回監督がみんな男性なんだけど、女性監督のもあるといいと思う。女性が観に行かないんだったらこの企画は成功ということにならないだろう。僕が観に行った時はぱらぱらと女性の観客いたけど、思ったより少なかった。企画そのものは面白いと思うので無事続いてほしい。僕は続きあるのだったら極力観に行きます。

ロマンポルノ・リブート(その2)

特に「牝猫たち」を「牝猫たちの夜」「(秘)色情めす市場」の続きで観ることが出来たのは面白い経験だった。タイトルからも分かるように「牝猫たち」は「牝猫たちの夜」を直接の下敷きにしている。風俗で働く3人の女を描く、というコンセプトは同じで、「牝猫たちの夜」のトルコ極楽が「牝猫たち」ではデリヘル極楽若奥様になっている。主人公の名前も同じ「まさこ」になっていてはっきりオマージュ的な側面がある。ついでに言うと「牝猫たち」には日活唯一の怪獣映画「大巨獣ガッパ」のガッパのソフビ人形が大事な小道具として使われていてそこも日活オマージュなのである。
正直言ってあまりごりごり社会派の作品だとつまらないかな、と思ったんだけど僕は「牝猫たち」はかなり面白かった。社会派的な道具立てはありながらも、それぞれに孤独を抱えた登場人物たちを脇役に至るまで愛情を込めて描いていて好感を持てた。主演の井端珠里さんも魅力的だった。「牝猫たちの夜」はトルコ嬢たちよりもゲイの誠くんの描き方が面白くもあり古臭くもあった。間に観た「(秘)色情めす市場」は文句なしの傑作だった。今回観た旧作ロマンポルノの中ではダントツでよかった。ここまで来るともうポルノだかなんだか分からないが。

もう一つ、はっきり対応関係があるのが「花芯の刺青 熟れた壺」と中田秀夫監督の「ホワイトリリー」。「花芯の刺青」の母娘関係を師弟関係に置き換えて、個々のエピソードもかなり使いまわしながら換骨奪胎している。と言ってもさすがに元ロマンポルノの助監督だった中田監督はロマンポルノの伝統に忠実で、一番ロマンポルノらしいロマンポルノ。ストーリーもけっこうベタながら緊張感があり引き込まれて観た。女性二人のセックスシーンを白百合の散らされた白い部屋のイメージで耽美な感じに撮っているのだけど、そう言えば昔のロマンポルノでひよこがいっぱいの部屋でセックスするのあったよなあ。と思ったら「映画芸術」のインタビューで中田監督も言及していた。小沼勝監督の「OL官能日記 あァ!私の中で」という映画だったらしい。ラストは思いがけず爽やかだった。

ロマンポルノ・リブート(その1)

京都みなみ会館で公開されているロマンポルノ・リブート・プロジェクト、新作5作と記念上映の旧作のうち6本を観た。
新作は「風に濡れた女」(塩田明彦監督)、「ジムノペディに乱れる」(行定勲監督)、「牝猫たち」(白石和彌監督)、「アンチポルノ」(園子温監督)、「ホワイトリリー」(中田秀夫監督)。
旧作は「恋人たちは濡れた」(神代辰巳監督)、「赫い髪の女」(神代辰巳監督)、「牝猫たちの夜」(田中登監督)、「(秘)色情めす市場」(田中登監督)、「一条さゆり 濡れた欲情」(神代辰巳監督)、「花芯の刺青 熟れた壺」(小沼勝監督)。

日活ロマンポルノ生誕45周年記念ということだが、45周年ってちょっと中途半端といえば中途半端だな。でもなかなか面白い試みだったと思う。

僕はもろ日活ロマンポルノの世代というわけではない。今はなき京一会館で古い作品をいくつか三本立てで観ているし、後期の、例えば「夢犯」(1985年)なんかはリアルタイムで観て感心した記憶はある。DVDでも何本か観ている。でも実は今でも日活ロマンポルノってそんなにすごかったの?と思わなくもない。京一会館でどきどきしながら観に行った時も、1時間強の作品が長く感じることの方が多かった。確かに面白い作品はあるし、全体としては退屈な作品でもおっ?と思うカットが入っていたりもする。しかし大学時代にすでに作品の多くは古く感じた。今「傑作」と言われる作品を観ても、正直ピンとこなかったりする。今回いくつか観て、神代監督が意外に合わなかった。性愛に関する感じ方や考え方というのはこの40年くらいでずいぶん変わったのだと思う。古く感じるのはやっぱり女性の描き方だ。女は男のもの、的な考えが見え隠れするとどうも物語に入り込めない。そういう意味で今回新作旧作合わせて観て、僕は全体としては新作の方が面白かった。

みなみ会館の上映で面白かったのは、今回のリブート作品、旧作ロマンポルノとゆるい対応関係があるらしく、その関連する旧作と新作を続けて観られるようにして組んであったこと。記念上映という形で組み合わされていたのは以下の通り。
 「嗚呼!おんなたち猥歌」>「ジムノペディに乱れる」
 「赫い髪の女」>「風に濡れた女」
 「(秘)色情めす市場」>「牝猫たち」
 「一条さゆり 濡れた欲情」>「アンチポルノ」
 「花芯の刺青 熟れた壺」>「ホワイトリリー」
「嗚呼!おんなたち猥歌」は今回残念ながら観逃したのだが、後はその組み合わせで観た。ただし、タイトルからも分かるように「風に濡れた女」は同じ神代監督の「恋人たちは濡れた」、「牝猫たち」は同じ田中監督の「牝猫たちの夜」にむしろ影響を受けていて、それも続けて観られるようになっていた。続けて観るといろいろ楽しみが増えるのでこれから観る人にもおすすめしたい。
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