IMARI展と四谷シモン展

出掛けにスマホの充電が切れた時のための充電器を念の為にかばんに入れたのはいいが、肝心のスマホ本体を置いていったのでは何のための充電器か分からない。
時計も持たなかったので時間も分からないし、カメラも持たなかったので写真も撮れない。
そもそも行き先の情報もよく分からない。

そんな迷子のような気分で、まず大阪市立東洋陶磁器美術館の「IMARI」展に行く。
ヨーロッパの宮殿を飾った輸出品としての伊万里焼の展覧会。
まあそういう歴史的なことに興味があったわけではないのだが、なかなか豪奢で面白かった。
今描いているマンガにちょこっと使う予定。

そして本来の目的は西宮市大谷記念美術館の「四谷シモン」展。
もっと早く行く予定が色々とずれ込んで最終日に行くことに。
スマホがないので、そもそも最寄り駅が分からない。
とりあえず阪神電車で西宮まで行く。
タクシーを拾うが、美術館の名前がさらにうろ覚えである。
西宮が最寄り駅ではなかった気がしたので、タクシーでどれだけかかるかも心配だ。
幸い、ワンメーターに毛が生えたくらいで着いた。
ちなみに最寄り駅は阪神なら香櫨園、阪急なら夙川である。

最終日は四谷シモンさんのギャラリートークとサイン会がある。
サイン会は先着100名で整理券が配られるのだが、僕は72番だった。
紅葉づいた日本庭園を背景に四谷シモンさんの人形がおいてあるロビーはなかなか不思議な取り合わせで、そこは写真も撮れたのだが、写真を撮れる機械の持ち合わせがない。
ギャラリートークもロビーにいる間は撮影可だったのだが、それも撮りそびれる。
ギャラリートークが始まる前に一通り見る時間があった。
澁澤龍彦を失い、東方キリスト教にはまっていた時期の天使の連作がとりわけ印象深い。
特に箱に入った三体。
おなじみの少年少女の人形ももちろん美しい。

ギャラリートークが始まると四谷シモンさんの声はマイクを通しても聞き取りにくいのだが、とつとつと語る語り口がこれらの作品を作った人形作家らしい。
創作人形というあまり前例のないジャンルをこつこつと迷いながら作ってきた人の言葉だ。
個々の作品を語るときは声のトーンが少し上がった。
ご本人も言われるとおり、どの作品も四谷シモンさんの分身なのだと感じる。

サイン会の時は握手もしてもらった。
あたたかい手だった。

帰りの雨のためか迷子の気分は去らなかったが、いいものを見ることができた一日。
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スキャナーズ

今年7月に亡くなったメークアップアーティスト、ディック・スミス追悼の3本目はデイヴィッド・クローネンバーグ監督の1981年作品「スキャナーズ」。
ディック・スミスのクレジットは「consultant for special make-up effects」なのでどこまでディック・スミス本人が手がけたのか分からないが、クライマックスの超能力合戦での特殊メイクは前年の「アルタード・ステーツ」によく似ており、ディック・スミスぽい。
「スキャナーズ」と言えば、「頭パンッ」のシーンが有名だがここはクリス・ウェイラスという人が担当したらしい。
観たのがずいぶん昔なので、もっとクライマックスに近いシーンのように錯覚していたが、かなり冒頭に近いシーンなんだな、これ。

物語はスキャナーと呼ばれる超能力者たちをめぐるホラーSFなのだが、随所に若きクローネンバーグの才気が感じられる。
精神的な力である超能力が身体と強く結びついた表現で描かれているのがいかにもクローネンバーグらしい。
後半でコンピューターを超能力で「スキャン」するという場面が出てきて、超能力を介して人間の精神と機械がシンクロするというアイディアがサイバーパンク的。
70年代的なざらついた映像を残しながら、80年代サイバーパンクを先取りしている。
「ブレードランナー」の公開と「AKIRA」の連載開始が1982年。
「スキャナーズ」はほぼ同時期で少しだけ先行している
同じ超能力を扱ったデ・パルマの「キャリー」(1976年)と比べると、ずっとケミカルでサイバーだ。

クライマックスの超能力者二人の対決シーンは派手なSFXを使っていないが、生理的な緊張感を伴う名シーン。
血管が浮き出し、顔がぼこぼこ変形し、血が吹き出す。
この生理的な次元で強く訴えてくるのがクローネンバーグの持ち味だが、それをディック・スミスの技術が支えている。
あと、役者がみんないい顔してるなあ。
レポック役のマイケル・アイアンサイドやルース博士役のパトリック・マグクーハンはもちろん、端役に至るまでいい顔の役者揃えている。
それと、スキャナーの一人で彫刻家のベンジャミン・ピアスの作品がなかなか魅力的。
悪夢的な映像に華を添えている。

僕が買ったのは続編の「スキャナーズ2」と「スキャナーズ3」も入ったボックスで、続編はクローネンバーグ監督作品ではないけど、近いうちに観たい。
クローネンバーグ特集もやりたいなあ。
ディック・スミス追悼はあと一作「永遠に美しく」を買ったので、今週中に観る予定。

ポルノナイト・曽根中生2本立て

久々のポルノナイトは今年8月26日に亡くなった曽根中生監督を偲んで曽根中生ナイト。
なんか追悼特集ばっかやってるなあ。
今回観たのは「色情姉妹」(1972年)と「らしゃめんお万/雨のオランダ坂」(1978年)の二本。

「らしゃめんお万/雨のオランダ坂」の方を先に観た。
時代は昭和初期、舞台は上海、横浜、長崎と移動する。
それなりにお金のかかった文芸色の強い一品。
(上海には行ってないと思うが。)
ヒロインは混血児のお万、演じるのはサリー・メイ、本当にハーフらしい。
武藤周作演じるヤクザの男に騙されて女郎屋に売り飛ばされたりするのだが、それでも男を憎めない。
そんなお万を救おうとする眼帯の若者政吉を脚本屋の大和屋竺が好演している。
お万に今ひとつ感情移入できなくて、ラストもちょっと唐突な気がした。
キャラクターとしては政吉が一番感情移入できる。
政吉が殺されるシーンはこの映画のハイライトの一つ。

「色情姉妹」は現代日本を舞台に、三人の姉妹の無軌道な生き方をスタイリッシュな映像で描いている。
冒頭のシーンが白黒でその映像が白黒反転したところに赤い文字で「色情姉妹」と入る。
かっこいい。
長女は酒場で働いていて、義理の父親と関係している。
次女は会社勤めで、上司と不倫の関係にあるが、それに縛られているわけでもない。
三女は高校生でスケ番グループに属している。
それぞれに存在感があって、個人的にはこっちの方が面白かった。
次女が二階で義理の父に襲われるシーンで、みかんが面白い使われ方をしている。
撮影は峰重吉という人で、鈴木清順監督とよく組んでいたカメラマンだそう。
なるほど、という感じがする。
一番知的な感じの次女(二條朱実)が脇毛を剃っていなくて、これはちょっとエロいと思った。

実はこれまで曽根中生監督の映画をあまり観たことがなかったので、まだこれが曽根中生節、というのはよく分からない。
これからぼちぼち観ていきたいと思う。

アルタード・ステーツ/未知への挑戦

10月の月極映画祭は今年7月30日に亡くなったメークアップアーティスト、ディック・スミス映画祭だったのだけど、結局「エクソシスト」1本しか観れてない。
そんなわけで11月も引き続きディック・スミス追悼映画祭である。

今回観たのは1980年の「アルタード・ステーツ/未知への挑戦」。
監督はケン・ラッセル。
主演はウィリアム・ハートで、これがデビュー作だそうだ。
それは知らなかった。

当時劇場で観ていて、今ひとつのような気がしたが、改めて観ると悪くない。
アイソレーション・タンクを使った感覚遮断実験というのは大学で習った。
意識の変容をもたらし、人によっては幻覚を生じる。
それにメキシコ先住民の使っているキノコというのが出てきて、意識の変容が身体までも変えていくという趣向のSF映画である。
ウィリアム・ハートが自ら被験者となる科学者エディ・ジェサップ役。

ケン・ラッセルにしては抑えめな演出なのは、幻覚シーンとのギャップを強調するためだろう。
幻覚シーンはけっこう見応えがある。
ケン・ラッセルの面目躍如たるものがある。
ここはたぶんディック・スミスはあまり関わってなくて(山羊の特殊メイクはディック・スミスだと思うが)、特殊視覚効果はブラン・フェレンという人である。

ディック・スミスの特殊メイクは、一つはエディが原初の人間に変わってしまうところの原始人メイク。
これはウィリアム・ハートではなく他の人が演じているのだが、原始人が町中を走り回った挙句動物園に入り込むくだりはなかなか面白い。
原始人の人は大熱演だ。
もう一つはウィリアム・ハートの体がうごうご変化していくところ。
あと、ラストでは奥さんのエミリー(ブレア・ブラウン)の体も変化する。

ドラッグと意識の変容が身体の変容をもたらすというのは「アキラ」の鉄雄と似ている。
単純に影響を受けたとかそういうことではなくて、それが80年代的な身体観だったのである。
1982年にはデイヴィッド・クローネンバーグがディック・スミスの弟子であるリック・ベイカーと組んで「ビデオドローム」を撮っており、同じ年ジョン・カーペンターはロブ・ボッティンと「遊星からの物体X」を撮っている。
身体こそが異界である、という認識がそこにはある。
この映画も、自分の身体の深淵を覗くことから起こる恐怖を描いた映画と言えるだろう。
今ならCGでもっと極端な身体変化を描くことも出来るだろうが、ケン・ラッセルは特殊メイクと編集で効果的な画面を作っている。
最後は愛で解決しちゃうのはちょっと安直だが、あちらの世界に行ってちゃんと帰ってくる、というのは物語の構造として僕は嫌いではない。
行きっぱなしというのもそれはそれで面白いけどね。
ウィリアム・ハートもブレア・ブラウンもわりと惜しげなく脱いでいてそこも高評価。

次回はクローネンバーグの「スキャナーズ」。
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