スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

夜明けの縁をさ迷う人々

小川洋子さんという作家とは少なくとも二つ共通点がある。
苗字が同じことと、生まれた年が同じ1962年であることだ。
それだけで、勝手に親近感を感じている。

と言って、新刊が出たら欠かさず買うとか、体系的に読むとか言う熱心な読者ではない。
短編集「夜明けの縁をさ迷う人々」を買ったのもわりと気まぐれで、文庫版が出たのは平成22年だ。
でも期待以上に面白かった。
小川洋子さんが阪神タイガースの熱心なファンであることを何かで読んだ時は、意外な気がしたのだけど、この短編集は野球好きな小川洋子さんらしく、野球の話で始まり、野球の話で終わる。
といって、スポーツ小説集というわけでは全くない。
むしろ「奇想小説集」とでも言っていい作品集だ。
例えば、中華料理店のエレベーターで生まれエレベータの中で育った少年イービー(エレベーターボーイの略なのだ)のことを描いた「イービーのかなわぬ望み」、楽器に塗ると音がよくなる涙を売っていた少女が、「関節クラリネット」の青年に恋する「涙売り」。
一風変った主人公たちの一風変った物語がつづられる。

小川洋子さんはちょっとフェティッシュなまでに事物を書き込み、一つ一つはリアルに書き込まれた事物が全体としてはとても奇妙な世界を作り出しているのは、シュールレアリスムの絵画を思わせる。
そのシュールな世界の中で、主人公たちは切実に何かを求めていて、作りの大胆さと細部の繊細さがちょっとちぐはぐで魅力的な物語空間を作り出している。
個人的には、足裏マッサージの主人公と文豪Mの孫である老嬢のエロティックな短編「ラ・ヴェール嬢」が一番好き。

この短編集で気に入っていることの一つに、各短編のタイトルページに、磯良一さんのイラストレーションがつけられているということがある。
純文学に普通挿絵は入らないけど、僕は挿絵が好きなのだ。
もちろんどんな絵を入れるかについて細心の注意が必要だが、作品とマッチすれば挿絵はその本の不可欠な一部になる。
磯良一さんのイラストレーションは作品の雰囲気に合っていて、とてもいい。
短編を一つ読み終えるたびにもう一度タイトルページに戻って挿絵を見ると、なるほど、と納得したりする。
この本をお読みになる人は、イラストレーションにもぜひ目を向けてみてください。
スポンサーサイト
プロフィール

おがわさとし

Author:おがわさとし
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。