恐怖と欲望

今日(6月28日)は実駒と京都みなみ会館で映画を二本観た。
たまたまだけど、二本とも戦争を舞台にした映画だ。

一本目はスタンリー・キューブリック監督の幻のデビュー作「恐怖と欲望」(1953年)。
キューブリック本人が「アマチュアの仕事」として封印してしまった作品。
(以下ネタバレを含む。)

冒頭ナレーションで、これが特定の場所の特定の戦争ではなく、ある種の普遍的な戦場だと言うことが語られる。
敵陣に飛行機が落ち、4人の兵士が見方の陣地に戻ろうとする。
その極限状態での兵士の心理が克明に描かれる作品。

捕まえた現地の女(白人)を見張っているように言われた若い兵士が、彼女に慰めを求め次第に精神を崩壊させていく下りはこの映画の一つの山場になっている。
アップを多用した映像は緊迫感に満ち、息詰まるようなリアリティーがある。
女はほとんどセリフがないのだが、強い印象を残す。
後半のクライマックスは、残された3人が敵の将軍が近くにいるのを知り、1人が囮になって敵将軍を襲撃するという場面。
実はエンドロールを見るまで気がつかなかったのだけど、倒される敵将軍と主人公は一人二役である。
単にキャストを減らすためではないだろう。
戦場においては、人は自分を殺すのだ、というアイロニーだ。

キューブリック本人が撮影をしており、個々の映像は力強い。
食事中の敵を襲うシーンの蹴散らかされた食べ物の描写など、感心した。
なんとなくヌーヴェル・ヴァーグ的な感じもしたのだが、1953年にはトリュフォーもゴダールもまだデビューしていない。
当時としては画期的な映像だったのではないか。
一方、冒頭のナレーションを含め、多用される内言などが説明過剰な感じもある。
この辺りは後のキューブリックのストイックな映画作りとは違っている。
音楽の使い方もこなれていない。
しかし、荒削りだからこそ、若き日のキューブリックの野心が感じられる作品になっている。
天国だか地獄だかにいるキューブリックは今頃身もだえしているかもしれないが。

キューブリックが大好きだったS先輩がこの作品を観られなかったのは残念だ。
S先輩の「恐怖と欲望」評、読んでみたかった。
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