東宝特撮ナイト第夜(「地球防衛軍」「美女と液体人間」「大怪獣バラン」)

東宝特撮ナイト第3夜は「地球防衛軍」「美女と液体人間」「大怪獣バラン」の3本立て。
なんで3本立てなのかと言うと、制作順に2本ずつ観ていくと「地球防衛軍」「美女と液体人間」の次が「大怪獣バラン」「日本誕生」の2本になるのだが、「日本誕生」は3時間を越える大作なのである。
で、1本前倒しで3本立て。
結果として1957年から1958年にかけて制作・田中友幸、監督・本多猪四郎、特技監督・円谷英一のトリオが手がけた野心的な3作をまとめて観る形になった。

「地球防衛軍」は1957年作品。
それまでの怪獣映画と違い、異星人による地球侵略とそれに対する防衛戦を描いたSF作品。
この後「宇宙大戦争」(1957年)、「怪獣大戦争」(1965年)などに続いていく路線の最初の作品になる。
この映画から特撮映画もそれまでの縦横比1:1.33のスタンダードサイズから1:2.35の「東宝スコープ」へ変わる。
アステロイド・ベルトがかつてミステロイドという惑星で、その星にはミステリアンという住民が住んでいた。
その星は原水爆戦争で破壊され、宇宙の放浪者となったミステリアンが、いったんは火星に移住するものの、次の居住地として地球を選んで攻めてくる。
うん、由緒正しい昭和SFですね。
本多猪四郎監督作品に出てくる志村喬博士(安達博士)の科学的知識はやっぱり危なっかしい。
「火星と土星の間に小さな星の群れがあるね」と言ってますが、「火星と木星の間」の間違いじゃないでしょうか。
いや、「火星と土星の間」でも間違いとは言えないけど、木星を飛ばす意味が分からない。
地球に来たミステリアンは富士の麓に拠点を置き、村祭で撮った写真に映っている女性5人を要求する。
ああ、この所帯染みたローカルな話と壮大な宇宙戦争の話が同居するのがいかにも昭和っぽいなあ。
それにしてもこういう地球の危機に当たって軍人と科学者だけで方針を決めていくのはどういうことなのか。
アメリカ映画でもそういうのあるね。
野心的な作品ではあるが、今観ると「ゴジラ」や「空の大怪獣ラドン」に比べても緊迫感に欠け、散漫な印象を受ける。
モゲラ弱いなあ。

「美女と液体人間」は翌年1958年の、「変身人間シリーズ」の1作。
それ以前に「透明人間」(1954年)があるが、本多作品としては1作目。
この後「電送人間」(1960年)「ガス人間第一号」(1960年)と続く。
水爆実験で死の灰を浴びた人間が液体人間になる、という設定で、この時期の本多猪四郎の原水爆に対するこだわりが読み取れる。
「ゴジラ」がヒットしたから、というだけの理由ではない迫力を感じる。
それにしても制作順に観ると、東宝特撮映画って本当に同じ役者が繰り返し出てるんだなあ。
佐原健二、白川由美は「空の大怪獣ラドン」以来3作連続の主演。
平田昭彦、土屋嘉男もほとんど出ずっぱりだし。

この映画は完全に大人向けだし、わりとリアルな現代劇なので、役者の魅力が際立っている。
特にキャバレーの歌手を演じた白川由美はすごく魅力的。
あと、キャバレーのダンサーが踊るシーンは今観てもかなりエロい。
大人になったらこういうキャバレーというところに行くのかなあ、と思ってたけど、ないですね。
一回だけ福岡で昔ながらのキャバレーというものに行ったけど。

人間が溶ける、っていうのはなんか本能に訴える怖さがある。
僕の世代だと「マグマ大使」の人間モドキが溶けるシーンとかがトラウマものだった。
この映画は他の変身人間ものと違って、液体人間自身の苦悩が描かれはしないんだけど、液体が意志を持って動いていくのはなかなか気持ち悪くていい。
ラスト、東京の下水道にいる液体人間を退治するためにガソリンを流して火をつけるんだけど、液体人間を退治しても東京が火事になっちゃったらまずいんじゃないかなあ。
だいぶ派手に燃やしてますが。

同じ1958年の「大怪獣バラン」は一転して、怪獣映画の王道に戻る。
白黒映画なのも原点回帰的な感じだ。
「日本のチベット」と言われる北上山地の僻村に伝わる婆羅陀巍山神(ばらだぎさんじん)こと中生代の恐竜バラノポーダー(聞いたことない)、略してバランを巡る人類との攻防戦。
「日本のチベット」って、岩手県(多分)にもチベットにも失礼だろうと思うけど、まだ「秘境」というのが地球上に残されていた時代だ。
ヨーロッパで言えばトランシルバニアとかそんな感じだ。
(そう言えばテレンス・フィッシャー監督の「吸血鬼ドラキュラ」が同じ年だ。)
「ゴジラ」にも大戸島の古老が伝説の怪獣ゴジラについて語るシーンがあり、たぶんDVD化されていない「獣人雪男」を経て、この映画につながっているのだと思う。
「獣人雪男」観てないから何とも言えないけど。

久しぶりに観たけど、バランの造形はかっこいい。
四つ足怪獣としてはアンギラスよりずっと洗練されていて、着ぐるみでここまでの造形美を達成できたのは素晴らしいんじゃないだろうか。
幻の蝶を追って湖底のバランを呼び覚ましてしまうストーリーは精神分析的に解釈することも可能ですがしませんよ。
あ、主演はさすがに飽きたのか、野村浩三、園田あゆみというニューフェイス。
平田昭彦はやっぱり出てます。

後半はバラン対自衛隊の構図になる。
「美女と液体人間」に続いて出演している千田是也の杉本博士をブレーンに東京湾での決死の攻防が描かれる。
ちなみに自衛隊の名前が東宝特撮映画に出てくるのはこの映画が多分初めて。
(「地球防衛軍」では「ゴジラ」同様「防衛隊」だった。)
軽快な自衛隊のテーマ(正式な名前は知りませんが)がかかるのもこれが初めてかな。
そして自衛隊が怪獣を退治するのはこれが多分最初で最後。
湖から現れたバランは最後東京湾に眠る。
うん、すごく精神分析的。
(くどいけど解釈はしませんよ。)

短い期間に矢継ぎ早に色々な傾向の特撮映画が作られていたのはまさに時代の勢いというものだったのだろう。
リアルタイムで経験している時代ではないのでちょっと羨ましい。
充実の3本立てでした。



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