去年マリエンバートで

アラン・レネ特集第4弾は1961年の代表作「去年マリエンバートで」。
「去年マリエンバートで」を観るのは、これで三回目。
何度観てもよく分からないながら引き込まれる映画だ。
大学時代に観た時は「二十四時間の情事」の方が分かりにくかった印象があるのだけど、どう考えてもこちらの方が難解である。
むしろこれくらい難解だとストーリーを追うことを諦めて映像だけに集中出来たのだと思う。
映像の魔術的なことは今観ても新鮮だ。
絵画的な美しさを追求する監督は固定カメラを好む傾向があると思うのだが、この映画はほとんどのシーンが移動カメラである。
それでいて計算し尽くされた絵画的な美しさがあって、一分の隙もない。

巨大なホテルに集う人々の中の一人の女と二人の男を中心にあるようなないような物語は展開する。
男は女に、去年お会いしましたね、と話しかけ、女は記憶にない、と答える。
もう一人の男はカードを使ってゲームをするのだが、それに勝ち続ける。
女は男に言い寄られる中でだんだん自分の記憶に自信が持てなくなる。
カードをする男は二人の関係を離れたところから見ている。

この映画は、元々黒澤明の「羅生門」にインスピレーションを得て作られたものだそうだ。
なるほど、「羅生門」も一人の女と二人の男の話であり、何より「記憶」についての映画だ。
過去の事実が見るものの主観で変貌していく「羅生門」のテーマを脚本のアラン・ロブ=グリエと監督のアラン・レネがさらに追求した映画だというのは理解出来る。
とは言えそれが理解出来れば分かると言うような映画ではない。

僕はタイトル通りの「去年マリエンバートでお会いしましたね」というセリフがあったように記憶していたのだが、今回観たらそんなセリフはなかった。
しかし「去年マリエンバートで」という映画は、客観的に外側に実在しているフィルムやDVDではなく、記憶の中にこそあるのかもしれない。
記憶の中で変貌していく「去年マリエンバートで」は常に新しい映画としてあるのではないか。
そんな変なことを考えさせられてしまう映画なのだ、この映画は。
多分、僕はこの映画を死ぬまでにあと何回かは観ると思うのだけど、観るたびに違う映画としてこの映画は立ち上がってくる気がする。
あるいは全ての映画はそうなのかもしれないが、そのことを自覚させる力をこの映画は持っていると思うのだ。
スポンサーサイト
プロフィール

おがわさとし

Author:おがわさとし
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR