狂った草

今年3月1日に91歳で亡くなったアラン・レネの監督作品を4月、5月と観てきたわけだが、今回がラスト。
2009年の「風にそよぐ草」を観る。
この映画は日本公開時に京都シネマで観ている。
この映画を劇場で観られたのは幸せなことだった。

しかしまたしても邦題がぬるい。
原題は「LES HERBES FOLLES」で、直訳すると「狂った草」、これで「雑草」の意味になるそうだ。
「狂った草」でいいと思う。

歯科医のマルグリットが引ったくりにあって、バックとともに奪われた財布を初老の男ジョルジュが拾う。
ジョルジュはその中に入っていた飛行士姿のマルグリット(彼女は飛行士免許を持っている)の写真に過剰に思い入れ、そこからいささか常軌を逸した恋愛物語が始まる。
美人の奥さんがいて二人の子どもと孫までいるジョルジュののぼせっぷりがまるで男子中学生のようでおかしい。
というか、もはやストーカーの域である。
最初は戸惑っていたマルグリットも何故かジョルジュに惹かれていく。
こちらもおかしい。
マルグリットを演じたサビーヌ・アゼマは後期のアラン・レネ映画の常連で、今回観た後期3本どれにも主演している。
ジョルジュの奥さんやマルグリットの友人歯科医も巻き込んで物語は坂道を転がるように加速していく。
個人的には警察官の出てくるエピソードが好き。

これを撮ったのが89歳の監督だとはとても思えない、瑞々しい映像。
流麗な移動カメラ、原色を多用した計算され尽くしたグラフィックな構図、物や数字に対するフェティッシュなこだわり。
まさにアラン・レネの集大成というにふさわしい。
ロマンティックで狂騒的で残酷な大人の恋愛喜劇。
初老のジョルジュの迫り来る死に対する焦りが物語の一つの背景になっているのだが、その焦りすら笑い飛ばしてみせる陽気さで物語は疾走する。
人を食ったようなラストも含めて大好きな一本。

DVDには特典映像がついていて、この映画の重要な場面の一つである映画館とその周りの町並みががセットであることが分かる。
まさかセットだとは思わなかったのだが、アラン・レネのこだわりが分かって興味深かった。

アラン・レネはこの後さらに一本映画を撮っている。
死ぬ直前まで充実した作品を作り続け、天寿を全うして亡くなった。
羨ましいような見事な人生だと思う。
機会があれば今回観ることができなかった中期の作品も観てみたい。
スポンサーサイト
プロフィール

おがわさとし

Author:おがわさとし
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR