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紙の月

宮沢りえ主演、吉田大八監督の「紙の月」を観た。
吉田大八監督は前作の「桐島、部活やめるってよ」が注目を集めた監督だが、僕は未見。
原作は角田光代の柴田錬三郎賞受賞作だが、こちらも未読。

既婚の銀行の契約社員が、契約先の老人の孫である大学生と関係を結び、それをきっかけに横領に手を染めていく。
と書いてしまえば、何かありがちな話のようだが、そして作品の中でも「ありがち」という言葉はキーワードのように使われるのだが、監督の狙いは主人公が「自分を抑えて生きてきた女性が、快楽を燃料に破滅へと暴走していく姿を「爽やかに」描」く(パンフレット・インタビュー)ことにあったそうで、それは成功しているのではないかと思う。

宮沢りえの佇まいがとてもいい。
不惑というのは孔子の話であり、40歳は普通の人間にとってはむしろ惑いの年ではないだろうか。
ユングは中年期の危機を「人生の正午」と読んだ。
人生がこれから暮れていく転換点であり、それまでの生き方が問われる年代である。
40歳の宮沢りえの抑えた演技はある種の危うさと不穏さを感じさせる。
もちろん華やいだシーンでは今でも十分美しいのだ。

この映画では梨花(宮沢りえ)は人生に特に大きな不満を抱えているわけではない。
夫(田辺誠一)はやや鈍感ながら温厚で妻への愛情を失っているわけでもない。
仕事にも多分それなりにやりがいを感じている。
その梨花がふとしたはずみから横領に手を染めていく。
そのプロセスが丹念に描かれていてスリリングだ。
大学生の光太(池松壮亮)は特別イケメンというわけでもなく、そこがかえってリアル。

小林聡美が銀行のお局様的な役で存在感を示している。
ほとんど笑顔を見せない役で、今まで観たことのない小林聡美だけど、さすがに貫禄がある。
宮沢りえと小林聡美の関係がこの映画の軸になっている。
もう一人、大島優子が小悪魔的な銀行員を演じていて、こちらも好演。
この二人は映画オリジナルのキャラクターだそうだが、映画は三人の女の関係を中心に回っていると言っても過言ではない。

映像は繊細で、抑え目の演出もきめ細かだ。
だからこそクライマックスの衝撃は素晴らしく、鮮やかだ。
善悪ではなく、窓ガラスを破って走り出したい衝動に共感できる。
監督と宮沢りえはこの作品に、シド・ヴィシャスの「マイ・ウェイ」をイメージしていたそうだが、この一見端正な映画にパンクの精神が息づいている。
そこがいいと思う。
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