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草原の実験

京都みなみ会館で「草原の実験」を観た。
新鋭アレクサンドル・コット監督のロシア映画である。

先日観た「裁かれるは善人のみ」もロシア映画だったけど、そう言えば僕はソ連崩壊後のロシア映画ってろくに観てないな。
ソ連時代の映画はけっこう好きなの多いんだけど。

「草原の実験」は、主要な登場人物が4人だけで、しかもセリフが一切ない。
舞台はどことも知れない草原で、そこに少女が父親(であるのはパンフで知ったが)と二人で暮らしている。
父親はモンゴル系の顔をしている。
その少女をめぐって幼なじみの男(やはりアジア系)とよそ者らしいヨーロッパ系の金髪の男が三角関係にある。
そのささやかな物語と、後で見る大状況が対比されて描かれる。

まず、映像が恐ろしく繊細で美しい。
光の表現が繊細極まりなく、人も物も景色も完璧な構図の中に切り取られて一部の隙もない。
そしてヒロインの少女が素晴らしく美しい。
パンフレットによるとエレーナ・アンという、父が韓国人、母がロシア人の韓国国籍の無名の新人だそうだ。
セリフのない映画なのだが、芯の強い聡明な少女を印象的に演じている。
というより、監督は演技させずに撮って、それをつないだらしい。

さて、ここからはネタバレ抜きで書くのがちょっと難しい。
先にお断りしておく。








この映画には最初から何か不穏な空気が流れている。
描かれているのは草原の質朴な人たちの生活なのだが、そこに介入する何者かの存在が描かれる。
最初に登場するのは翼のない白い飛行機に乗ってやってくる男たちだ。
父親はこの飛行機に乗せてもらってはしゃぐのだが、すでに翼のない飛行機という時点でおかしい。
この映画の非現実的なテイストを印象づける。
その後も軍関係者らしき人たちの存在がほのめかされる。
ある雨の夜父親はやってきた男たちによって裸にされ、ガイガーカウンターらしきものを突きつけられる。
父親の不審な死の後、少女が一人道を行くとその先には有刺鉄線が張られている。

実はポスターにある「世界を驚愕させた結末」は、そこまで行くとそれほど予想外というわけではない。
この草原がソ連の核実験場を意識していることはわりと早くから明らかだからだ。
むしろこの映画の登場人物は最初から死んでいて、終末後の世界の中で過去の記憶を繰り返しているのかもしれない。
そんな気にさせられるエンディングである。

この映画にはタルコフスキーの「サクリファイス」を思わせるところもあるが、寓話としての深みには欠ける。
素朴な人たちのささやかな幸せと絶対悪としての核兵器という構図が単純すぎるからだ。
しかしこの映画の魅力は「衝撃のラスト」ではなく、その細部にある。
ソ連映画のよき伝統を受け継いだ宝石のような光の芸術である。
アレクセイ・アイギによる幻想的で前衛的な音楽もまた素晴らしかったことを付け加えておく。
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