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ボーダレス

「ボーダレス 僕の船の国境線」を観た。
イランのアミルホセイン・アスガリ監督による驚愕のデビュー作である。

まず、国境の川に座礁している廃船という舞台が魅力的だ。
映画はほとんどこの廃船だけを舞台にして進む。
この廃船にイラン人の少年が一人暮らしている。
その暮らしぶりがリアルに生き生きと描かれている。
それだけでもすでに魅力的なのだが、そこに隣国(イラク)の少年兵がやってきてドラマは一気に緊迫する。
廃船の中で互いにテリトリーを奪い合う二人は言葉が通じない。
イラン人の少年はペルシャ語を話し、隣国の少年兵はアラビア語を話す。
そこにさらに赤ちゃんとアメリカ兵が加わる。
アメリカ兵は英語しかしゃべれないし、あかちゃんはまだ言葉が分からない。
つまり、廃船という舞台の中に言葉の通じない四人がいる、というこれはもう設定の勝利である。
シンプルな中に非常に根源的なテーマが凝集している。

また、この映画はサスペンス映画としてよく出来ている。
語っているテーマは現代的でありかつ普遍的なのだが、テーマがむき出しになった頭でっかちな映画ではない。
最初から最後まで緊迫感を持ったエンターテイメントとして観る者を引っ張っていく。
子どもを主人公にしているが、子どもだからかわいく描こう、といういやらしさがない。
登場人物はそれぞれに生きるために必死に行動する。
そのリアリティがともすると観念的になりかねない設定に命を吹き込んでいる。
その前提があってこその、この作品のテーマである「ボーダレス」なのである。
けっして甘い映画ではない。
国境を越えて理解しあうことの困難を知っている人の、厳しく同時に優しい見事な映画である。
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