空と水と星と

先週の日曜日は実駒とメルヒェンな一日を過ごした。

まず大阪文化館・天保山の「愛と平和の祈り 藤城清治展」に行く。
最終日に行ったので、これから見たい人の役に立たないレビューになる。ご容赦。
藤城清治さんは1924年生まれの91歳。
ばりばりの現役影絵作家である。
僕は僕で昔「木馬座アワー」のケロヨンが大好きだったし、実駒は子供のころ「暮しの手帖」の連載を読んでいた。
その藤城さんが今も新作を次々に発表していること自体に感動する。
来年出版されるという「聖フランシスコの生涯」も大変な力作だ。
最近の作品ほど洗練されてシンプルになる、という風に変わっていっているようには見えない。
むしろ最近の作品ほどエネルギッシュになっているようにすら見えるのが驚異だ。
作風はかなり幅広いのだが、今回改めて見て藤城清治さんは幻視者なのだと思った。
藤城さんが特定の宗教の信者であるのかどうかは知らないが、その作品に宗教性のようなものを感じる。
人間世界を通して人間世界を越えたものを描いている。
光と影で作られる影絵という技法とあいまって、藤城清治さんは日本の幻想美術の中で傑出した存在なのだ。
先日亡くなった2歳年上の水木しげるさんがどちらかと言うと土俗的な幻想世界の描き手だったのに対して、藤城さんの幻想世界は透明感のある空と風と星の世界だ。
宮沢賢治と相性がいいのもそのせいだと思う。
もちろんトレードマークの小人たちはかわいく魅力的なのだが、描かれる世界は思いのほか壮大で宇宙的だ。

京都に帰って、MOVIX京都でまず「映画 ハイ☆スピード!-Free! Starting Days-」を観る。
実は僕は元になった「Free!」を観ていない。
家ではしょっちゅうかかっているのでチラ見程度には観ているが。
映画はテレビシリーズの前日譚で、主人公たちの中学生時代が描かれている。
まず、制服の描き方がフェティッシュだ。
詰め襟の制服というのは実はあまりメリハリがなくて描きやすいものではない。
身長が伸びることを見越して少し大きめに作ってある中学生の詰め襟の制服をアニメーションでここまでちゃんと描いているのは初めて見た。
光と影はここでも重要だ。
廊下を歩いているシーンの、背景が窓になるところでライティングが変わる。
実写なら当たり前のことだが、アニメーションでそれをちゃんと描いている。
そしてもちろんこの映画の影の主人公は水そのものだ。
どうやって撮っているのかよく分からないくらい、水の表現が秀逸である。
手描きとCGを組み合わせているのだが、夏のプールの、塩素の匂いすらしそうなくらいリアルな水の描写だ。
主人公たちのドラマについては正直言って言葉で説明しすぎている気がした。
悩みそのものもその解決も言葉で説明されてしまうことが多かったのは残念。
その中で遙と真琴が着衣で泳ぐシーンはアニメーションならではの美しさがあって印象に残った。
個人的には旭のばかっぽさが好きだったりするが。
これはメルヒェンではないのではないか、と思う人もいると思うけど、一種のメルヒェンだと思うな。
そのキラキラした純粋さにおいて。

さらにMOVIX京都で「リトルプリンス 星の王子さまと私」を観る。
字幕版の方。
僕は「星の王子さま」のよい読者ではないが、この映画は予告編を観た時から惹かれた。
実駒は「星の王子さま」のファンだ。
映画は「星の王子さま」を元にしつつ、「星の王子さま」の読み手と語り手を登場させることによって、フィクションと現実の関係を想像力豊かに描き出す。
「星の王子さま」の語り手はサン・テクジュペリ本人ではなく、物語の中の飛行士がそのまま年をとった老人で、その老人の隣に引っ越してきた少女、それに少女の母親が物語の一方の主人公。
こちらは3DCGで描かれている。
「星の王子さま」の物語そのものはそれとはテイストの違うストップモーション・アニメーションで描かれていてとても味がある。
少女の母親は絵に描いたような教育ママ(日本では死語だが)。
これ、アメリカにもこんなお受験的な世界があるのか、日本か韓国辺りの受験事情を元にしたフィクションなのかどっちだろう。
少女とお母さんは東洋人にも見えるので、後者なのかもしれない。
いずれにせよ、少女は名門校入学を控えた夏休み。
向こうは9月始まりだから、入学前の休みは夏休みなのだ。
夏の話が2本続いた。
冬観る夏の映画は眩しい。
それはともかく。
母親の言いつけ通りに生きてきた少女が、子どものような老人と老人の語る王子さまと出会い、自分の中の子どもに気づいていく。
少女の世界と王子さまの世界が交錯していくクライマックスが素晴らしい。
自分の中の子どもに気づいた少女がいつか自分で考え行動する本来の意味での大人に成長していく、というところがこの映画のミソだろう。

後日、高島屋で催された「リトルプリンス 星の王子さまと私展」も観に行った。
作り手のこだわりが伝わってくる展示で、もう一回映画を観に行きたくなった。
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