事の顛末(その2)

薬の量は致死量ではなかった。
しかし人気のないところであの量の誘眠剤を飲めばそのまま凍死することはありうる。
ただでも実駒は二日ほど寝ていないのだ。
そして実駒にはそういうことをしでかしかねない前科もあった。
慌てて早朝にもかかわらず隣のT家のベルを押した。
どうしました?と応えるT君に、みーにゃ来てない?と尋ねる僕。
来ていないというので、みーにゃが睡眠薬を持って家を出た、と早口で告げた。

T君と奥さんのAちゃんは古くからの友人だ。
僕のことも実駒のこともよく知っている。
二人はすぐに事態を察して出てきてくれた。
雪は降っていたがまだ積もってはおらず、足跡は分からなかった。
とりあえず車を出してくれたのだが独力で探すのは限界がある。
事態は一刻を争うと思われ、僕は携帯で110番に電話した。
捜索願を出すよう言われて、僕はタクシーで下鴨署に向かい、T夫妻は実駒の写真を取りにいったん家に戻った。
下鴨署で捜索願を出している間にAちゃんが写真を持って来てくれた。
下鴨署では実駒の特徴や夫婦仲、家の経済状態などを聞かれた。
心当たりの場所を二箇所ほど上げ、すぐにそこを調べてもらうよう頼んだ。

その後僕は家に戻って、実駒が帰ってくるのを待った。
昼から大学だったが、とても仕事をする気になれず、急用で、と言って休ませてもらった。
何人か実駒が連絡を取りそうな相手に電話してみたが、誰も実駒から連絡を受けていなかった。
いくつか仕事でどうしてもかけなくてはならない電話をかけると他にすることがなかった。
それでも最初はしばらくすれば帰ってくるだろうとたかをくくっていた。
しかし夕方になっても実駒は帰ってこず、警察からの連絡もなかった。
最悪の事態を思い浮かべ、胃がきりきりと痛んだ。

置手紙の類はなかったが、念のためにもう一度部屋の中を見回った。
そこであるはずのないものを見つけた。
実駒の机に鍵が置いてあったのだ。
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